壊れても、繋がっているもの

母を亡くした１２歳の少女ジョージーは、母との思い出が詰まった居場所を守るため、ロンドン郊外のアパートで独り暮らしをしている。
生前に母からもらった大切なユニフォームをさながら戦闘着のごとく身にまとい、大人顔負けの話術と図太さで近隣住人やソーシャルワーカーの介入や詮索をかわし、親友のアリと自転車を盗んでは転売をして日銭を稼ぎながら、たくましく生き抜いていた。
だが一方で、夜になると寝付けず、母が遺したスマホに収められたホームビデオを再生して孤独と哀しみを耐え忍んでもいた……。

そんな彼女のもとにある日突然、父だと名乗る金髪の男ジェイソンが現れる。
母を捨てて育児から逃げ、１２年間ずっと行方がわからなかった父を許せず、拒絶するジョージー。

彼女は、ジェイソンの裏をかいてジョージーを締め出そうとするが「児童相談所に通報する」と言われてしぶしぶ受け入れる。
かくして初対面した親子の１２年越しの共同生活が始まるも、信頼関係はゼロ。
不器用ながら食事を作ったり世話を焼こうと歩み寄るジェイソンを「花束を渡して謝れば済むと思ったなら大間違いよ」と跳ねつけるジョージー。
ジェイソンも娘の頑なな態度に手を焼き、２人の距離はなかなか縮まらない－。

凸凹なふたりを見かねて間に立っていたアリが家族と旅行に行くことになり、正真正銘のふたりぼっちになったジョージーとジェイソン。
すると、ふとしたことがきっかけで２人は徐々に打ち解け、別々に過ごした年月を埋めるように親子の会話を紡いでいく。
信頼関係ゼロのふたりが見つけたものとは・・・。

抜群のビジュアルセンスと優しくもエモーショナルな親子のドラマが評判を呼び、若手監督の登竜門、サンダンス映画祭でも絶賛！

メガホンを取ったのは、１０代の頃からミュージックビデオの監督として活躍し、パパラッチカメラマンとしても活動していた異色の経歴を持つ新鋭シャーロット・リーガン。
初の短編映画『Standby』（１６）はトロント国際映画祭でプレミア上映。２作目の短編『Fry-Up』（１７）はロンドン映画祭、サンダンス映画祭、ベルリン映画祭で上映され、３作目の『Dodgy Dave』（１８）はトロントとロンドン映画祭で上映された。
２０１７年マイケル・ファスベンダーの製作会社DMCフィルムに才能を見出され、本作を制作した。

＂閉ざした心を《解体》しながら、《闘う》人＝《SCRAPPER》＂
これは、大切な人を亡くした悲しみを《不器用な父娘》でカラフルに塗り替えていく、愛おしい物語－。

主演は本作がスクリーンデビューとなるローラ・キャンベル。たくましさと可憐さが共存した絶妙な演技で、ロンドン映画批評家協会賞【若手俳優賞】を受賞するほか、複数の俳優賞にノミネートされた。

一人娘ジョージーと親子関係を構築しようとする不器用な父親ジェイソンに扮するのは、『逆転のトライアングル』（２２）、『アイアンクロー』（２３）など、話題作への出演が立て続くハリス・ディキンソン。
次世代の英国俳優として期待を寄せられている彼が新境地を魅せる。

どこか機能不全な“親子”の交流と成長を描く、オリジナリティあふれる感動作が誕生！
いびつだけど愛おしい最高の“父娘”の姿を、武蔵野館のスクリーンで！！